頭の中で日本語に訳してしまうと、なぜ英語が遅くなるのか
英語学習者の多くは、気づかないうちにこれをやっています。
英語を聞いたとき、まず頭の中で日本語にして意味を考え、それから返事を言おうとして、日本語で内容を作ってから英語に直しているのです。
このやり方は安心感があります。理にかなっているようにも感じます。けれど、会話のスピードという点では、これが英語を遅くしてしまいます。
もちろん、訳すこと自体が悪いわけではありません。初心者にとっては、意味を確認したり、英語と日本語の違いに気づいたり、理解を確かめたりするのに役立ちます。
ただし、実際の会話の中で毎回これに頼ってしまうと、頭の中の作業が一つ増えます。その結果、聞くことが不自然に感じられたり、話すときに止まりやすくなったり、テンポの速いやり取りについていきにくくなったりします。
問題は「ひと手間増えること」
会話では、スピードが大事です。
英語に慣れている人は、聞いたことを毎回日本語に直さなくても、そのまま意味をつかめることが多いです。一方で、学習の途中にいる人は、どうしても日本語をはさみやすくなります。
つまり、
英語 → 日本語 → 意味 → 日本語で返事を作る → 英語
という流れは、
英語 → 意味 → 英語
という流れよりも時間がかかります。
このひと手間があるだけで、返事が遅れたり、言い方が不自然になったり、相手が話し続けているうちに内容を見失ったりしやすくなります。
頭の中が忙しくなりすぎる
会話は、単語を知っているだけではできません。
相手の音を聞き取り、文の形を追い、意味をつかみ、自分の返事を考え、実際に口に出すまでをほぼ同時に進めています。
その状態でさらに「日本語に訳す」という作業まで入ると、頭の中の負担はかなり大きくなります。
そのため、学習者の中には「単語は分かるのに、速い英語になると急に分からなくなる」と感じる人が多くいます。
これは、知識が足りないだけとは限りません。処理のしかたが遅くなっていることも大きな原因です。
英語が自然に出る人は、毎回組み立てていない
英語がスムーズに出る人と、なかなか出てこない人の違いは、文法知識の量だけではありません。
大きな違いは、英語がどれだけ自然に使えるようになっているかです。
英語に慣れてくると、聞くことも話すことも前より楽になります。いちいち強く意識しなくても、意味が入りやすくなり、口からも出やすくなっていきます。
でも、毎回日本語を通して英語を作るクセがあると、そのたびに遠回りになります。すると、英語を速く自然に使う力が育ちにくくなります。
訳すことで、かえって不自然になることもある
もう一つ大事な点があります。
それは、英語と日本語はきれいに一対一では対応していないということです。
単語も完全には一致しませんし、言い方の自然さ、強さ、やわらかさ、ニュアンスも変わります。
だから、頭の中でそのまま訳してしまうと、意味は通っていても、少し不自然な英語になりやすいのです。
つまり、英語で話しているつもりでも、実際には「日本語の考え方を英語の単語に置きかえているだけ」という状態になりやすいのです。
これは話す力だけの問題ではない
この問題は、話すときだけではありません。聞くときにも強く影響します。
文の前半を日本語に訳している間に、相手はもう後半を話しています。これが速い会話だと、さらに大変です。
しかも、実際の英語では、単語がつながって聞こえたり、くだけた表現が出てきたり、感情が乗った話し方になったりします。
英語に強い人は、そうした英語を日本語に全部直さなくても、かなり直接的に意味をつかめます。だから聞くのが速く、楽になります。
逆に、毎回訳さないと理解できない状態だと、少し速くなっただけで置いていかれやすくなります。
教えていてよく見ること
これは実際のレッスンでも本当によく見ます。
文法も単語もかなり知っているのに、会話になると急に止まってしまう人がいます。紙の上ではできるのに、実際に話すと遅いのです。
そういう人たちは、英語力が低いというより、頭の中で日本語を通すクセが強いことが多いです。
たとえば、
- 簡単な質問でも返事までに時間がかかる
- 直訳っぽい言い方が多い
- 自然な速さの英語が聞き取りにくい
- その場で文を一から作ろうとして固まりやすい
こういう特徴が見られます。
だから必要なのは、いつも文法を足すことだけではありません。むしろ、すぐ使える言い回しを増やしたり、英語を英語のまま意味につなげたりする練習のほうが大事なことも多いのです。
訳すこと自体が悪いわけではない
ここは誤解しないでほしいところです。
訳すことは、学習の中では役立ちます。初心者ならなおさらです。
意味を確認したり、難しい文章を理解したり、英語と日本語の違いに気づいたりするためには、とても useful な方法です。
問題なのは、頼りすぎることです。
勉強のために訳すのはいいのです。でも、実際の会話でも毎回それをしていると、英語がいつまでも速くなりません。
学ぶために訳すのはよい。
会話のたびに訳すことに頼りすぎないほうがよい。
では、何を練習すればいいのか
頭の中の翻訳を減らしたいなら、ただ「訳さないようにしよう」と思うだけでは足りません。代わりになるやり方が必要です。
1. 単語だけでなく、まとまりで覚える
たとえば、
- I think…
- I’m not sure, but…
- It depends on…
- One example is…
- The problem is…
- The good thing is…
- I’d say…
- In my case…
- What I want to say is…
- The main point is…
のような言い回しをそのまま覚えておくと、一から文を作る負担が減ります。
すると、考えるスピードが上がり、会話も少し楽になります。
2. 英語を日本語ではなくイメージにつなげる
新しい単語を覚えるとき、いつも「英語=日本語」で覚えるのではなく、場面やイメージ、気持ちと結びつけると、英語をより直接的に理解しやすくなります。
3. 完璧に訳そうとせず、まず意味をつかむ
会話では、全部を完璧に訳すより、まず全体の意味をつかむことのほうが大切です。
一語一語に止まってしまうと、会話の流れについていけなくなります。
4. 短くてもいいので、すぐ答える練習をする
簡単な質問に対して、20秒から40秒くらいで止まらず答える練習はとても効果的です。
完璧な英語を目指すより、まず早く英語を出す感覚を育てることが大切です。
5. 音読やシャドーイングを使う
自然な英語をそのまま繰り返して言う練習は、英語のリズムや言い回しを体に入れるのに役立ちます。
毎回頭の中で組み立てなくても、口から出やすくなっていきます。
6. 頭の中で少し英語を使う
英語力を伸ばすうえでは、頭の中で少し英語を使うことも役に立ちます。
たとえば、自分がしていることを英語でつぶやいたり、簡単なことを英語で考えたり、日本語に戻らずに短い内容を頭の中で練習したりすることです。
こうした小さな積み重ねで、英語が少しずつ身近になります。
「英語で考えなさい」よりも大事なこと
英語学習では、「英語で考えなさい」と言われることがあります。
でも、この言い方は少し分かりにくいです。
それを聞くと、「日本語を全部やめないといけないのかな」と思ってしまう人もいます。でも、そんな必要はありません。
もっと現実的で役に立つ目標は、
英語を一つ一つ日本語に訳さなくても、少しずつ意味をつかめるようにしていくこと
です。
そうなると、英語はだんだん「解読するもの」ではなく、「使えるもの」に変わっていきます。
最後に
まだ頭の中で訳してしまうからといって、英語が苦手だというわけではありません。
それは、今はまだ理解や返答のために一段階多い方法を使っている、というだけです。
そのやり方は、学ぶ段階では役に立ちます。けれど、もっと自然に会話したい、もっと速く聞き取りたい、もっと英語を楽に使いたいなら、少しずつそのやり方から離れていく必要があります。
英語が上達するというのは、単語や文法を増やすことだけではありません。すでに知っている英語を、もっと速く、もっと自然に、もっと直接的に使えるようになることでもあります。