どの言語にも当てはまることですが、英語のスキルを向上させようとする人々と接するとき、遭遇する確率の高い問題の1つは、リスニングスキルに一貫した難しさがあることです。特に日本人の生徒さんの場合、この重要なスキルの練習をほとんど、あるいは全くしていないことが多いように感じます。日本では悲しいことに、英語の勉強はほとんど学問的なものに限られており、単純に試験のリスニングや筆記に焦点が当てられていて、非常に限られた範囲でのリスニングの練習しかされていません。 

多くの英語を学ぶ人にとって、リスニングの練習はとても苛立たせたり、挫けそうになるものです。そこで、私が生徒さん達と共有しているリスニングスキルを向上させるのに役立つヒントをいくつかまとめてみました。

生徒さんが直面する多くの問題のひとつに、レベルに合っていない無謀な目標を設定し、沢山の事を短い期間で学ぼうとすることがあります。リスニングの上達には、リスニングに限った事ではないですが、時間を掛けることと継続的な努力が必要です。一貫性を保つことが重要ですが、これについては後ほど説明します。

では、さっそく始めましょう。

1.理解しやすいインプット教材を選ぶ

リスニングスキルを向上させるために最も大切なことの1つは、リスニングする教材の概ね理解出来るものをリスニングすることです。

このような教材は「理解可能なインプット」と呼ばれています。理解可能なインプットとは、すべての単語や構造が分からなくても、聞き手が理解できる言語のことで、基本的には、現在の自分のレベルより少し上のレベルのものを指します。

人それぞれでレベルが違っており、唯一無二の語彙力を持っており、また得意な分野や不得意な分野もある為、これを客観的に数値化するのは非常に難しく思います。教育者として、私は生徒さんのレベルを理解することに時間を費やし、ニーズに合った例文や教材をより良く提供できるように努めています。

一般的に、理解可能なインプットとは、少なくとも60〜90%を理解できるオーディオソースを指します。多くの人は、自分のスキルレベル以上のものを聞くと気持ちの良いものと感じずに、直感に反すると思うかもしれませんが、そういう状況に置くことは非常に重要です。

理解できないものを聞いていると、すぐに混乱し、イライラし、退屈になり、簡単にやめてしまうことになります。

多くの人は、映画やテレビ番組、ニュース放送、Youtubeの動画、あるいは歌の歌詞などを理解しようと、取り掛かります。その魅力はもちろんですが、知らない単語がたくさんあり、複雑な構造で

スピード感を持って話されると、挫折してしまうのです。また、自分が理解できるものだけを聞いていると、すぐにレベルが落ちてしまいます。チェスでも、テニスでも、絵画でも、英語でも、上達する唯一の方法は、少しずつ挑戦していくことです。すべての単語やフレーズを理解できなくても気にする必要はありません。また、教材で勉強しなくても良いです。学ぶトピックに含まれる新しい単語やフレーズをいくつか選び、その意味を覚えるようにしましょう。

どんな目標であっても達成する為には小さなステップに分け管理することが大切です。もっと大きな筋肉が欲しい?それなら、何百回もの小さなトレーニングセッションを重ねながら、徐々に重い重量でトレーニングします。同じ例で言うと、重量挙げの選手は、毎回少しずつでも自分を追い込むようにし、その過程で目標達成に近づいていくのです。語学も同じです。私はすべての生徒さんに対して、その人にとって興味深く、かつ達成可能なことに基づいて、一貫したリスニングとリーディングの習慣を身につけさせるよう心がけています。実生活では、即効性のある方法や近道はなく、常に一貫性を保ちながら勉強することが大切です。

2.自分が楽しめるものを聴く

少し前に書いたように、リスニングしている内容のほとんどを理解出来る教材を聞くことは、レベルアップに不可欠です。語学の中でも特に英語を学ぶことの素晴らしい点の1つは、語学力のレベルアップと同時に自分の好きなことについて学べるということです。興味のある、関連性のある教材を聞くことは、単にランダムなリスニング教材やダイアログを聞くよりも常に興味が向きます。もしあなたがすでに知っていて、興味のあるトピックを選ぶなら、その興味に関連する単語や専門用語を英語でとても速く学ぶことができます。また、興味のあるトピックを選ぶことで、ただ聞き流すよりもより深く集中することができ、モチベーションを維持することも出来ますので、途中でやめたりすることも少なくなります。

このような教材を聞くことで、特定のトピックに関する知識を深めることが出来ます。これは、私が教えている全てのプログラマー、科学者、医師にも言えることで、あなたにとっても同じことが言えるでしょう。注意点としては、自分が選んだ教材について、必ずしも全てを理解しようとしないことです。このバランスを取るのがなかなか難しいのですが、自分にとって興味深いテーマなので、当然、全てを完全に理解したくなるのですが、そうすると時間と労力がかかり、疲れてしまうことがあります。リスニング教材の大半は、自分のスキルを上げるための捨て駒として扱いましょう。もし、重要で役に立つことがあれば、同じトピックの他のリスニング教材にも必ず出てくるはずです。この最後のポイントは、次のテーマにうまくつながっています。

3. 細部ではなく、全体像に集中する

人はよく、細かいことに気をとられて、主な意味や「要点」と呼ばれるものを把握出来ないことがあります。リスニングには集中力が必要ですが、集中力がないと、ビデオや会議、会話などの主旨を聞き逃してしまうことがあります。

私のところに初めて来た生徒さんは、提示された音声を一言一句聞き取ろうとすることがあまりに多いのです。新しい単語を聞くと、その単語やフレーズを理解出来ないために、一瞬で集中力を失い、話の続きに注意を払わなくなるのです。音楽家が間違った音を演奏しているのを聞いたことがありますか?しかし、彼らはその音に気付いたとしても止まらずにそのまま弾き続けているはずです。リスニングも同じで、ある言葉を聞き流すことで、その話題の全体像が見えてきます。そのため、新しい単語があっても、リスニングや集中力におけるほんの一瞬の出来事であり、ショーの中断や集中力の欠如にならないように、教材の60~90%を理解することが重要です。

4. 少なくとも最初は短く

よくあるもう一つの間違いは、すぐに長いオーディオ録音やテレビ番組、さらには映画を聴き始めてしまうことです。ターゲットである言語のテレビ番組や映画を見ることは、リスニングの上達にとても有効ですが、何度も見返したり、聞き直したりすることは難しくなります。たとえ好きな番組や映画であっても、見返すには時間がかかりすぎるのです。あらゆる形式の練習教材にも言えることですが、短い教材が適しているのです。短い教材であれば、全体を通して短時間で2~3回、あるいはそれ以上復習が出来ます。数週間後、数か月後に戻って教材をもう一度勉強すれば、以前に学んだことを思い出し、定着させることが容易に出来ます。

教育者として、私は興味深く短時間で学べ、また生徒さんのレベルに合った教材を探すのにかなり多くの時間を費やしています。では、どれくらいの長さの教材が良いのでしょうか?

1~3分 – 初心者は、短くて比較的簡単な教材が最も効果的です。何度も聞き返えしやすくなり、難しすぎたり精神的な負担になったりすることなく、発音や一般的な意味を聞き取ることが出来るようになります。

3-5分 – 中級の学習者に適したレベルです。この場合も、あまり時間をかけずに2、3回繰り返し聞くことが出来ます。

5-10分 – より上級の学習者が、第二言語で集中する能力を養うのに適しています。長い音声の場合、2回聞いて、翌日か同じ週の後半に3回目を聞くのが一番効果的だと思います。このレベルのリスニングでは、1回目はトランスクリプト(字幕)なしで、必要に応じてメモを取りながら聞くことをお勧めします。2回目はトランスクリプトを使って、聞き逃した細かい部分や、珍しい発音、予想外の発音の単語を全て聞き取れるようにします。

10~15分以上のリスニング教材は、上級学習者がさらに練習したいときや、特定のトピックをより深く知りたいときに最適ですが、長ければ長いほど、分析したり繰り返したりするのに時間がかかることを念頭に置いておく必要があります。長い教材では、より注意が必要な部分を特定し、そこだけを集中して聞くようにすると良いでしょう。

全てのレベルにおいて、可能な限りオーディオのトランスクリプトを用意し、スキルが上がれば、トランスクリプトを確認する前に、出来る限り教材だけを聴いて理解出来るようにするのが良い方法です。それでは、次のトピックに移りましょう。

5.異なるスピードで聴いてみる

言語学習者にとっての大きな壁のひとつが、ネイティブスピーカーの話すスピードです。教科書には、理解しやすいように簡略化され、スピードが落とされた音声が使われていることがよくあります。しかし、教科書の音声は、多くの場合、とても退屈で、実際の話し言葉とは似ても似つかないものです。自然な話し言葉は、通常速いものです。ネイティブスピーカーはとても速く、流暢に話すので、学習者は耳に入ってくる単語やフレーズ、そして音を分解する十分な時間がないのです。上記のように、細部まで聞き取らないようにすることは、自然な話し言葉のスピードと複雑さに対処するための1つの方法です。しかし、それでも限界があります。

教科書の音声は、より理解しやすくするために速度を落としています。現在では、これと同じテクニックをあらゆるリスニング教材に応用されております。ほとんどのオーディオ再生ソフトでは、音声をスローにすることができます。NetflixやYoutubeでは、動画の速度を変更することが出来ます。オーディオブックのサイト、Audibleでも、本のナレーションの速度を変えることができます。多くの選択があり、多くの場合無料で利用出来ますし、携帯電話やPC、Macにすでに速度を変更できるアプリが入っている場合もあります。

このテクニックを使うことによって得られるものは沢山あります。私がよくやるのは、学習者に最初は通常のスピードで聞いてもらい、その後、どの程度難しかったか、自分にとって速すぎたと感じるかどうかを尋ねることです。違うスピードで聞き返す必要がない場合もあります。その場合は、通常のスピードで何度か聞き直してください。

もし、学習者が速すぎると感じた場合は、音声を遅くすることをお勧めします。 多くの講師や教育関係者が、音声を元の速度の0.5から0.25まで遅くすることを勧めているのをよく見かけますが、個人的には、ほとんどの場合、これは役に立たないと思っています。私は0.75より遅くしないことをお勧めしますし、実際0.8の設定を使うことが多いです。この速度でも、オーディオに自然な感じを与えながら、個々の単語を聞いて理解するための時間を少し長くすることが出来ます。

他にリスニングスキルを向上させる方法は、オーディオのスピードを上げる事です!この方法は、どのように役立つのでしょうか?スピードを上げて聞くことで、集中力と理解力を高めることが出来ますが、これには素晴らしい効果があります。しかし、そのような効果を得るためには、ゆっくりとしたスピードから始める必要があります。通常より少し速いスピードから始め、リスニングスキルが向上するにつれて、徐々にスピードを上げていきます。そうすることで、リスニングのスピードが上がり、最終的には英語を処理し理解する能力も向上します。そして、より速いスピードでビデオを聴くことに慣れた時、自然に話す英語がより簡単に感じられるようになるのです。

6. 聴いた事を理解する為にメモを取る

勉強時間を最大限に活用する方法のひとつが、ノートを取ることです。メモを取ることは、集中力を高める効果があります。詳細なメモを取ることは、キャリアやビジネス上の理由で英語を上達させることを目的としている場合、メモを取ること自体が重要なスキルであるため、会議に出席する際の良い練習になります。

 また、一度聞いた内容をもう一度聞くことで、メモした内容の間違いや聞き間違いがあるかどうかを確認することも出来ます。

聞いたことをそのまま繰り返すことが出来ない場合、単語やフレーズを書き留めておくと、後で先生やインストラクターに質問する時に便利です。

また、複数の話者がいる場合、誰が何を言ったかを追跡するのにも便利です。これは、リスニングのスキルだけでなく、役に立つスキルも磨くことが出来ます。

7.やり続ける

どんな価値のあるスキルもそうですが、リスニングと言語のスキルを総合的に伸ばすには、時間がかかります。大変な時もあります。勉強に邪魔が入ることもたくさんあるでしょう。人生も同じようであります。しかし、一日のうちほんのわずかな時間をこの学習に費やすだけでも、あなたがすでに数か国話す人(マルチリンガル)でない限り、まだ想像もつかないような為になることを得ることが出来るはずです。

皆さんは、何かを始めた後、それをやめてしまって、後で後悔したことはありませんか?私自身、数え切れないほど、後で後悔した人に出会いましたが、たいてい語学の勉強を途中で辞めてしまった人達でした。

大切なのは、何事も継続することです。1日20分を目標にしましょう。でも、目標に達しなかったり、何日か休んだりしても気にしないでください。自分の好きなことを学び、新しいことに挑戦することで、新鮮さを保つことができます。そのような小さな努力の積み重ねが大事なことです。